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第33回 シルバーふれあい短歌・俳句・川柳展 🌺入選作品🌺
☆入賞者名、敬称略
【短歌】
短歌の部
☆奨励賞(最高齢者)☆
散る時代運良く生きた四世代大正昭和平成令和
小野 次三(宇佐市)(九八歳)
梅の花空をみつめて一踊り私もまねて大踊り
平林 彌生(大分市)(百歳)
※年齢は令和四年四月一日現在
伊勢 方信 選
☆☆特選☆☆
球根と花の苗植え春を待つ介護ベッドの視線の先にく
山内 京子(佐伯市)
〈評〉介護ベッドにあるのは、或いは臥すことになるのは誰であろうか。上の句に込めた春への憧憬は、その先に、誰もが抱く生きてあることへの幸せや、希望を感じさせられる。倒置法が一首の詩情を高めている。
☆入選☆
出征の父見送りし町の駅今スーパーの幟はためく
林 成敏(国東市)
〈評〉戦後の復興期を経て、急速に発展した社会構造が、辛い思い出だけを残して古里を変容させたことへの感懐。三年後は戦後も傘寿。
虹色をかさねてひらく冬花火霧雨けぶる疫禍の空に
宮武 千津子 (別府市)
〈評〉疫病禍の人々を励ます為の冬の花火。受けとめ方は境遇によって異なるだろう。下の句に、作者の嘆きに近い呟きを聞く。
打ち牡蠣を洗う小さな汐溜ほのかに温く如月に入る
阿武 洋子(佐伯市)
〈評〉夕刻に近い潮溜りで、冬が旬の真牡蠣を打ち破り、その身を洗っている。潮のほのかな温さから、季の移りを推る感覚は鋭敏。
山本 和可子 選
☆☆特選☆☆
豊漁を願いて今日も船を出す豊後水道朝焼の海
御手洗 金重(佐伯市)
〈評〉乱獲や汚染による赤潮で近年魚がとれなくなったと聞く。大漁旗はためくイメージとは裏腹の厳しい現実。しかし豊後水道の豊かな海を信じて漁師は今日も朝焼の海船船を出すのだ。美しい光景に深い祈りを感じる秀作。
☆入選☆
米寿過ぎ友と未来の夢語る卒寿で飲もうまた白寿でも
佐藤 満洋(大分市)
〈評〉老いると未来は少なく夢は小さくなるが、米寿には米寿の未来と夢がある。卒寿、白寿になっても友と一緒に飲めるほどの幸せはない。
かけっこで葉っぱに負けたと園庭の楓の落ち葉持ち帰り来る
梅木 至子(大分市)
〈評〉何とも可愛らしい快活な園児。生まれながらの詩人のようなこの幼子への溢れる愛情をよく抑えた表現描写が見事な作品。
両脇に大人となりし子と参る鎮国一宮西寒田神社
西﨑 廣江(大分市)
〈評〉立派に育てあげた二人の子を左右にして参詣する幸せ。自負と感謝が上句に滲む。固有名詞を入れ漢字を列ねた下句の据え方も秀逸。
太田 宅美 選
☆☆特選☆☆
胸に住む昭和の母の子守唄令和の孫の添い寝に歌う
神徳 和雄(津久見市)
〈評〉昭和の母は作者でララバイである子守歌には中津の「おむくの父さん」「五木の子守歌」「中国地方の子守歌」など全国各地にあり忘れ得ぬ名歌を唄って、今は孫を寝せつける。この作品の唄と歌を入れ替えたい。令和に廃れそうな歌は日本人の心でもある。
☆入選☆
鳳凰を一針ひとはり刺繍せり疫病退散の祈りをこめて
田口 玲子(大分市)
〈評〉想像上の瑞鳥で五色絢爛の至芸に仕上げた鳳凰にコロナウイルス追放を願って叮嚀に刺繍する姿がリアルでありこの努力で近いうちに収束するだろう。
亡父よりも十歳長生きの白寿われ病いの友を励ましつづく
首藤 ハルヱ(大分市)
〈評〉父親を89歳で亡くし、99歳の長寿を存えながら、作者よりも若いかも知れない友人の病状を気づかう心根が何とも尊く見習いたい。
冥土からそろそろ来いと招くけど借金払いが済まねば逝けぬ
柴田 カヨ子(佐伯市)
〈評〉人によっては共感を得るだろうと思われる。例えばローンなども借金のうちだが、真面目な生活者の心掛けと独特のユーモアを内在している。
【俳句】
俳句の部
☆奨励賞(最高齢者)☆
青空に紅葉さえる白馬渓
北山 爲友(臼杵市)(百歳)
初霜や流れるような寺の屋根
北窓は大スクリーン鳥渡る
北窓は大スクリーン鳥渡る
平山 ナミ子(大分市)(九十八歳)
※年齢は令和四年四月一日現在
山下 かず子 選
☆☆特選☆☆
哲学の彩して潜む竜の玉
八千代(大分市)
〈評〉葉隠れに見える美しい碧玉をどう捉えるのかが作者の感性。「哲学の彩」と直喩した。瑠璃の実を表に出さず葉の中に深く蔵する姿は、人生の探求者のようで、正に哲学者。季語の本質を衝いている。
☆入選☆
年寄りの達者自慢や山笑ふ
後藤 利夫(大分市)
〈評〉大いに自慢しよう。時に病気自慢も割り込んで話が弾んでいる様子も見える。春山の胎動と「達者自慢」の取り合わせの妙味。
葉ぼたんの渦一鉢に納まらず
本多 英子(大分市)
〈評〉堅く締まった葉牡丹の葉(渦)。茎立つ頃には渦を解き大きく広がってゆく。「一鉢に納まらず」の写生眼が良かった。
柿の花こぼれて母の忌日かな
橋本 真喜子(由布市)
〈評〉苦労が多く、実を結ばない事の多いのが母というもの。ぽとりと落ちた柿の花に母の忌日を重ね見た。しみじみと鑑賞したい。
吉原 白天 選
☆☆特選☆☆
八十路とて紅ほんのりと初鏡
都留 ナミ子(宇佐市)
〈評〉八十歳までよく生きてきた。正月に鏡を見るとずいぶん老けた。若い頃は良かった。そうだ紅をさして若返ろう。気持ちと生き方が優しく素直に句に出ている。ねんりんピックにふさわしい素晴らしい俳句である。
☆入選☆
抽選を見つつ賀状を読み返す
内藤 幸一郎(由布市)
〈評〉年をとると賀状が来るのが楽しみである。その上、抽選は嬉しい。下五の読み返すという中に、よく気持ちが分かり、良句になっている。
天領の名残ぞ匂ふ古ひひな
脇坂 啓子(杵築市)
〈評〉京都から天領へ下向した豪華な「ひな」から当時が偲ばれる。匂ふが如くに雅さやその頃が思い出され、心豊かで昔をしのぶ良句である。
白梅や年月重ね母白寿
時枝 則子(宇佐市)
〈評〉梅はめでたい。九十九歳の白寿を迎えた母はもっとめでたい。季語を上手に使いの気持が自然に伝わって来るような良句である。
古賀 宣道 選
☆☆特選☆☆
初御空当直明けの若き医師
吉賀 京子(臼杵市)
〈評〉若い医師の逞しさが「当直明け」にあり、大きく深呼吸でもしているのだろう。また「初御空」に未来に希望を託す気持ちが溢れている。若き医師を素直に詠んで、作者の医師への感謝の念と多幸を祈る気持ちがある。
☆入選☆
黒葡萄老いては遠き兄いもと
小野 道山(大分市)
〈評〉「老いては遠き」は心理的な遠さである。高齢の今は行き来も叶わない。兄弟の間をとりもつ「黒葡萄」は間違いなく美味である。
埋火をさぐりて今朝も暖を継ぐ
中村 洋子(豊後大野市)
〈評〉「埋火」は今はもう見られない。往時の主婦の冬の朝一番の仕事を丁寧に詠みあげていて懐かしい。「暖を継ぐ」が言い得て妙。
送り出す夫の肩先初景色
工藤 祥子(竹田市)
〈評〉「初景色」は元日に眺める景色で瑞祥に満ちて見えるもの。掲句の「夫の肩先」が秀逸で、そこには夫婦仲の良ささえうかがえる。
【川柳】
川柳の部
☆奨励賞(最高齢者)☆
一滴が清流となり大海へ
アフガンに生涯かけた勇医さん
アフガンに生涯かけた勇医さん
北山 爲友(臼杵市)(百歳)
なき父の自慢であった井戸の水
築城 幸子(大分市)(九七歳)
※年齢は令和四年四月一日現在
髙木 豊柳 選
☆☆特選☆☆
ありがとう蛇口ひねれば水が出る
井上 正彦(中津市)
〈評〉あって当たり前の水、昭和の水汲み、井戸の想い出、そして命と水、点から線の展開、当たり前が当たり前でない時代を生きて、水の尊さありがたさを読んだ句に感銘を受けました。いくつもの物語りが生まれます。
☆入選☆
羊水を抜けて対面我子抱く
深田 鈴子(大分市)
〈評〉十月十日母になる準備を終えて待つこの一瞬、世界に響く初声、いの一番に抱く我が子。経験者故の一句、母の強さを知りました。
島沈むグレタの叫び水の中
伊牟田 洋史(国東市)
〈評〉温暖化、もうごまかしは効きません。世界の盟主はお国が優先、グレタの叫び聞き耳持たず。少女の願い何時届く。的を射いた一句です。
水はまた命の話問うてくる
飯干 美恵子(別府市)
〈評〉豪雨に汚染水、北極の氷、目を向ければ命、水に問うて見たくなることばかり。今を冷静に見た一句として感銘しました。
足立 岩男 選
☆☆特選☆☆
一滴の水旅を経て大河なる
後藤 明彦(宇佐市)
〈評〉水の一滴はどこから出ているのか、自分は若い頃山で遊んで、夏、北アルプス連峰の雪解け水の一滴が涸沢下をくぐって上高地あずさ川へと。人も世間の川の旅です、大河となれよの人生訓。力強さを感じます。
☆入選☆
清き水悪しき水をも人の技
寺司 愛子(大分市)
〈評〉人はみな善悪の水の中で生きている。お互いに助け合い、同じ枝です大樹になろう、やさしい心が見えます。
初日の出水平線に湧く希望
神德 和雄(津久見市)
〈評〉新しい年に日の出待つ水平線に、太陽は浮き上がるよう見えるそうで、湧く希望今年もガンバルと声が聞こえそうです。
水ぬるむ花いっぱいの春よ来い
小深田 力(由布市)
〈評〉コロナ禍で長い自粛の生活が続いています。今年あたりは春を楽しみたいと思う元気さを感じます。
大谷 和幸 選
☆☆特選☆☆
水入らず団欒笑顔揃う幸
河野 和寿(大分市)
〈評〉随分前になりますが、十人で夕餉の卓を囲み笑らいの絶えないひと時がありましたが、今は子供の声も聞かなくなりました。今回選考する中、温かでホッと心和む歌に接し心打たれました。感謝を込めて特選とさせていただきました。
☆入選☆
悠久の水の流れを見て学ぶ
吉瀬 久子(中津市)
〈評〉変らぬ四季のめぐり来る中、止まらない水の流れに人生を写し学ぶ。人も自然と思う心に感動しました。
アフガンに水路残した師を悼む
村上 伸男(別府市)
〈評〉人の命の尊さを思いやさしさと冷めない熱意を秘めて一身を投げ打ち活動した師を心から崇拝します。惜しい宝を失くし残念です。
足るを知る心穏やか手水鉢
福寿草(国東市)
〈評〉自然石を穿った手水鉢、いつも清浄な水で満たされ日頃あまり気にしない手水鉢に自己の心情を写し詠まれた一句、感動いたしました。
※以上 作者敬称略