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第35回 シルバーふれあい短歌・俳句・川柳展 🌺入選作品🌺

☆入賞者名、敬称略

【短歌】

短歌の部

☆奨励賞(最高齢者)☆

おはようと声かけ残しペタル踏む風にマフラーの手を振るごとし
廣瀬 光代(佐伯市)(百三歳)
ひらひらと風に吹かれて舞う木の葉秋の気配を今また覚ゆ
和田 光夫(豊後大野市)(九六歳)
       ※年齢は令和六年四月一日時点の満年齢

伊勢 方信 選

☆☆特選☆☆

海亀の来る砂浜の清掃に今年も妻とプラごみ拾う
糸永 光(国東市)
〈評〉県内で海亀の来る砂浜は、四浦半島の高浜海水浴場をはじめ、杵築市や国東市の海岸など。初夏の海亀の産卵の為に行う環境整備は、砂浜の自然保護活動でもある。無償の奉仕活動を続ける作者の生き方に学びたい。

☆入選☆

老夫婦しずかに住める垣にそいザクロの花が今年も咲ける
安藤 淑子(大分市)
〈評〉初夏にひらくザクロの深紅色の花には、落ち着いた雰囲気がある。今年の花から、老夫婦の穏やかな生活に思いを馳せている。。
ヨシの穂のゆるる休み田見下ろして馬頭観音眼を剥きて建つ
伊藤 美佐子 (杵築市)
〈評〉仏道を生きる衆生(命あるもの)を救う馬頭観世音は、農耕馬の守り神でもある。休耕田を減らせない農政を叱責しているようだ。
訃報聞き夜道の海岸線行くに波を照らせる月がつき添う
加藤 智子(大分市)
〈評〉よほど身に近い人か、親交の深い人の訃報であろう。月が、作者の思いに寄り添うととらえることで、主観を抑え得ている。

 

山本 和可子 選

☆☆特選☆☆

面会にどなたですかと問う妻に良人ですよと手を握りしむ
村上 伸男(別府市)
〈評〉施設の妻の丁寧な問いかけに、二人が夫婦であることは忘れても自分を懐かしい人だと感じてくれていることが分かる夫は、全身全霊で「良人ですよ」と語りかけ手を握りしめる。究極の夫婦愛に心を打たれる作品である。

☆入選☆

夜なべする母が着てゐし綿入れを今宵羽織りて御節を作る
久下 つま子(別府市)
〈評〉寒い夜、綿入れを着ての夜なべで家計を扶けた母。その形身に温かくくるまれて作るお節料理には母の味が染み込んでいることだろう。
けれどもと言いかけ黙りし人の眼にあとの言葉を推して問わざり
市川 松代(佐伯市)
〈評〉けれども・・・と言いさした眼の表情にその心の奥を見通している。あとの言葉は推して知るべし。微妙な心理を巧みに詠った秀歌。。
あと十年楽しく生きようと励まして連れ立ち歩く川辺の小道
桜井 勝己(竹田市)
〈評〉ゆく川の流れに沿う小道は人生そのもの。老境に温度差があり、明るい作者と少しネガティブな連合いの会話に味のある優れた作品。

 

太田 宅美 選

☆☆特選☆☆

補聴器を嫌がらないでお母さん私はもっと会話をしたい
手嶋 朱美(国東市)
〈評〉昨年亡くなった従姉を思い出した作品で、祖母の時代から雑貨店を継いでいたが、近年閉店後、難聴が進み、補聴器の小さな雑音が怖く生耳暮しをしていた。寂しい日々に安らぎがあったのだろう。私には痛い歌である。

☆入選☆

紅葉の用作公園水鏡の池の舞台で夜神楽を舞う
久住農人(竹田市)
〈評〉この場面に接したことはないが貴重、かつ自身鼓舞を感じる歌。以前、三重町の道の駅で孫と一緒に楽しんだ日を回想しています。
憂きことの多き世なれど命欲し愛しき人を見送るまでは
中釜 淑子(大分市)
〈評〉上の句はやゝ大柄だが、色々ありすぎて読者に委ねる。深い人生感と自身の健康不安を剔って、共感させる手法である。
しっかりとにぎった小銭温もりてお年玉から募金する孫
西田 三津子(佐伯市)
〈評〉まだ幼いからお年玉もコインであろう。周りの所作を見習って募金箱に入れる音も想像する。そのうちお金の価値も覚えるだろう。

【俳句】

俳句の部

☆奨励賞(最高齢者)☆

一人居の床に二株黄水仙
廣瀬 光代(佐伯市)(百三歳)
百年だ さて今年より一年生
江嶋 安生(大分市)(百歳)
       ※年齢は令和六年四月一日時点の満年齢

吉原 白天 選

☆☆特選☆☆

すらすらと渋柿剥く手黒い皺
藤本 和枝(日田市)
〈評〉「すらすら」とから皮を剥く様子がよく分かる。長年やり慣れている。黒い皺から老いた手であろう。様子を実によく表現しているし、奥にその思いも窺える。この俳句から、十二分に、情景も気持ちも伝わってくる。

☆入選☆

餅搗の老いの指揮なす四世代
渡辺 セイ子(大分市)
〈評〉四世代そろっての餅搗、素晴らしい。最近はあまり見られない光景です。老いて指揮が出来る、この句から元気がもらえそうです。
新年の夢を砕いて大地震
国本 紘司(豊後高田市)
〈評〉今年は元旦早々、能登半島が大地震にあい、大変な被害が出ています。その様子が想像されますし惨事の心情もよく分ります。
甲子園笑い泣き舞う夏遠し
佐々木 幸香(豊後大野市)
〈評〉球児たちの目標、甲子園。そこから楽しみ元気をもらうドラマが生まれます。「夏遠し」の意味は深く、読む人に思いを広げます。

 

阿部 王一 選

☆☆特選☆☆

おほかたの事は許せる柚子湯かな
小田 祥子(大分市)
〈評〉柚子湯に入り、一日を振り返っています。いろいろなことがあったけれど、それも過ぎたこと、と受け入れているのです。大方のことはそうしてやり過ごしてきました。柚子の香りが「お疲れ様」と労ってくれています。

☆入選☆

父母知らぬ未来を生きて初景色
阿部 うれしこ(大分市)
〈評〉いつのまにか、亡くなったお父様お母様の年齢を超えた作者。これからは両親が見ることのできなかった人生の景色が広がります。
春浅し認知度は年相応に
 工藤 翠(大分市)
〈評〉認知度に限らず、○○年齢は若いに越したことはありません。しかし、年相応ならそれで十分、と肯定的に受け止めています。
好奇心捨てぬ八十路の初御籤
後藤 正人(大分市)
〈評〉俳句をしていると季節の変化に敏感になります。歳時記を捲れば素敵な季語がたくさん。好奇心いっぱいに八十路を楽しみましょう。

 

中尾 豊子 選

☆☆特選☆☆

百年の旅の途中を着ぶくれて
小倉 英司(豊後大野市)
〈評〉人生百年の時代。この冬も重ね着をして無事に乗り越えた。「旅の途中」の惜辞が軽やかな楽しい年月を連想させる。もし何かに躓いても、その先には佳いことも待っていると希望を持たせてくれる。心の持ち様が素敵。

☆入選☆

農具舎の護符貼り換へて初茜
加藤 賢二(豊後大野市)
〈評〉大晦日、農具舎の清掃を終え守り札も貼り換えた。外は既に新年の曙。丁寧な暮しぶりが伺える。きっと今年も豊作にちがいない。
初日さす鏡の褒むる笑ひ皺
みえのてんし(大分市)
〈評〉元日の朝、鏡に向かって百面相をしてみると、やはり笑顔が一番似合う。今年も笑い皺を深く刻んで周りの人も笑顔にして欲しい。
麦の芽の日射しに風に背伸びする
龍現寺 敏子(由布市)
〈評〉冬枯れの中、鮮やかな緑の小さな命。作者は我子を育てる様な優しいまなざしで毎日畑に通う。日差しと風と貴方に応えて伸びてゆく。

【川柳】

川柳の部

☆奨励賞(最高齢者)☆

乳のみ子は何を夢見るうぶ笑い
北山 爲友(臼杵市)(百二歳)
同室のご縁に感謝その笑顔
後藤 俊美(竹田市)(九六歳)
       ※年齢は令和六年四月一日時点の満年齢

飯干 美恵子 選

☆☆特選☆☆

ありがとう笑顔が魔法の杖になる
大下 昭子(大分市)
〈評〉「魔法の杖」とは鮮やかな詠みです。重苦しい息の詰まる様な場の空気を変えるのは笑顔でしょう。これぞ「魔法」です。「ありがとう」を笑顔に言える人生のあなたは素晴らしいですね。特選に相応しい一行詩でした。

☆入選☆

アルバムの笑顔弾ける青き春
瑠璃(宇佐市)
〈評〉誰も経験した青春。アルバムの中で弾ける白い歯。初恋のあの時。老いることなく今も輝くあなたの共感を呼ぶ句に出会いました。
もの忘れ人生の午後泣き笑い
吹田 満子(佐伯市)
〈評〉何を探しているのか、それすら忘れる日の恐怖。人生の今を午後に例えて終章へ向う日々を泣き笑いと見事に詠まれた楽しい句でした。
笑い合うシワの奥には闘志あり
薄田 ミキ(大分市)
〈評〉時には社交辞令。顔で笑って心は見せぬ。「シワ」に闘志満々とは見事な言い回しようです。現代の生き方を言い当てている句でした。

 

田中 和彦 選

☆☆特選☆☆

パネル越し笑顔満開面会日
ニューシニア(中津市)
〈評〉居なくては困る最愛の人、やっと会える喜び、かわす言葉に勇気をもらう。切ない思いがひしひしと伝わります。テンポのいいリズム、簡潔な表現に感銘。

☆入選☆

おはようの笑顔弾ける旗振日
深田 鈴子(大分市)
〈評〉希望の春、ピカピカのランドセル、やさしく見守るボランティアの笑顔。子や孫の幸せを願う一句に感動。
笑うこと忘れた拉致の永い冬
佐野 弘一(大分市)
〈評〉我が子との再会を願う家族の切ない気持ち、一日も早い解決を願う作者の心のつぶやきに共感。
コロナ癒え笑顔で向かう趣味の会
いぶき(杵築市)
〈評〉思いもつかぬ出来事、やっと日常を取り戻し、なつかしい友に会える喜び。貴重な経験、楽しさを大らかに詠みこんでいます。

 

髙木 豊柳 選

☆☆特選☆☆

合格の笑顔が跳ねる孫の春
大野 浜子(臼杵市)
〈評〉当事者も家族も耐えた一年。やっと迎えた受験の日。今か今かと待つ合格発表。重苦しい空気を変えた孫の歓喜の声。飛び跳ねる孫につられる家族。おめでとうの言葉に乗った笑顔、笑顔が目に浮かんできます。

☆入選☆

前を向き笑いよ戻れ被災の地
小野 孝子(豊後大野市)
〈評〉津波に地すべり、大火に消えた街。元旦の惨事に涙が止まりません。青いシートに降る氷雨。「笑いよ戻れ」そして前へ。
子の愚痴も笑顔で包む母がいる
みつこ(佐伯市)
〈評〉子の虐待、嫌なニュースも流れる昨今。子の愚痴を笑顔で包む母がいる。子育ての原点が愛であることに気付けと、日本の母へ。
反抗期終わったらしい子が笑う
若杉 幹夫(大分市)
〈評〉壁に残る穴。一度は通る反抗期。どこの家にもある話し。突然に変わる笑顔にホットする家族。長い冬が終りました。
※以上 作者敬称略