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シルバーふれあい短歌・俳句・川柳展 入選作品

☆入賞者名、敬称略

【短歌】

短歌の部

☆奨励賞(最高齢者)☆

飼犬も寿命尽きたか拾五年嫁に抱かれて南無阿弥陀仏
    小野 次三(宇佐市)(九七歳)
我が家よりいつもながめる由布の山四季おりおりにきれいに見せる
    古田 初子(杵築市)(九九歳)
              ※年齢は令和三年四月一日現在

【 伊勢 方信 選 】

☆☆特選☆☆

スーパーの幟はためく街頭に歳末募金のボランティア立つ
                 林 成敏(国東市)
〈評〉昨年五月「平成」は「令和」となり、新元号初の歳晩となったが、年末商戦や改元に浮かれる世情を別に、時代を超えた善意の連鎖が、           「歳末募金」という形で継承されていることに安堵する作者。写生の目が優しい。

☆入選☆

◆聞きなれぬアパルトヘイト目力の強き少女がテレビに映る
                 大塚 常代(竹田市)
〈評〉南アフリカ共和国で行われた、人種差別政策を抽いて訴えるのは、環境活動家グレタ・トゥンベリさんか。目力に少女の強い意志を感じた。
◆小春日を保育園児ら連なりて鈴鳴らしつつ歩道を渡る
                 仲摩 紅仁子 (大分市)
〈評〉輪禍を避け、他者の妨げとならない為の、保育園の方々の智恵が、園児らの身に付いているようだ。園児の顔が浮かぶ下の句が印象的。
◆海水の滴るひじきをほぐしつつ漁師は干せり朝の浜に
                 石吾 弓子(日出町)
〈評〉「ひじき」はホンダワラ科の海藻。魚を漁らない日にも、休むことのない、漁師の生活の一端を的確にとらえており、破綻がない。

 

【 山本 和可子 選 】

☆☆特選☆☆

発つ友の握った皺手が離せない永久の別れにするなよたのむ
                 渡邉 博文(杵築市)
〈評〉子に引きとられ故郷をあとにする友であろう。再びの逢いは約束し難い。一つまた一つと大切なものが剥がれ落ちてゆく人生の終盤。ぎゅっと握った皺の手の切ない感触が伝わってくる。絞り出すような下句に深い祈りがある。

 

☆入選☆

◆都会より竹馬の友の帰りきて残りの人生ふくらむ予感
                 迫村 裕子(大分市)
〈評〉体力、気力共に弱る余生に懐かしくあたたかい春風が吹きこむような幼友の帰郷。結句に喜びと期待が溢れる。友は誠に活性ビタミン。
◆青空に初競りの声響き合う丸太は美しく土場に積まれて
                 立花 和子(日田市)
〈評〉活気ある材木市場のさまを聴覚と視覚で的確に捉えている。年輪を重ねた丸太が次の使命の為に整列している。樹の香が清々しく匂うようだ。
◆冬日さす縁側の父は「自分史」に赤ペン入れつつときに目を閉づ
                 佐藤 博子(大分市)
〈評〉自分史に幾度となく赤ペンを入れて推敲している父。言葉には掬えない深い思いもあるだろう。お茶でも淹れながら見守る作者の目が温かい。

 

【 太田 宅美 選 】

☆☆特選☆☆

日本一の大門松の聳え立つ護国神社の空気吸ひ込む
                 稲葉 信弘(大分市)
〈評〉日本一と聞けばなる程と頷ける巨大な門松に心身の昂揚を覚え、その威厳の漂う霊気に似た空気を肺の底まで吸い込んで令和二年を乗り切ろうと詠まれた。富士山はじめ、日本一は各地の誇り。私には出雲大社大標縄がある。

☆入選☆

◆トマト色のシャツでサロンへペダルこぐ八十二歳今姥ざかり
                 本浪 純子(宇佐市)
〈評〉トマトは少し控えめな赤か。でも82歳には派手と識って自己の一助とし、自転車をこいでサロンへ向かう。正に姥盛りの生き方である。
◆三十五年の立ち仕事終へしばらくは弛ぶ筋肉歩めとふるる
                 数見 浩一(大分市)
〈評〉35年の立ち仕事を想像するに、常人の適わない生活、例えば理髪業、鮮魚店等。三句は定年後。隠居後、そして結語は揉みぬも充てて 評価。
◆「母ちゃん」と呼べば笑顔で応えしに齢九十八の眼差し遠し
                 香嶋 章子(佐伯市)
〈評〉加齢に関係なくずーっと「母ちゃん」と呼んできたが、白寿間近の母上は応え得ても作者を見ていない。老化の悲哀に直面している 日々。

【俳句】

俳句の部

☆奨励賞(最高齢者)☆

門松に一枝そえる梅つぼみ
自然界氷柱がつくる美術展
         小野 次三(宇佐市)(九十七歳)
青空に空にそびえる富士の山
美しい空を眺めて富士の山
         平林 彌生(大分市)(九十九歳)
              ※年齢は令和三年四月一日現在

【 阿部 正調 選 】

☆☆特選☆☆

つくづくしゆつくり走る福祉バス
                 吉賀 京子(臼杵市)
〈評〉この頃は地方の隅々にまでに福祉が行き届いており、当事者でない者も心休まる。ゆっくりは弱者に対する思いやりであり、同乗者との交流の間合いである。「つくづくし」に親近感と牧歌的な安らぎがある。

☆入選☆

どの子にも大いなる空雪だるま
                 古賀 宣道(別府市)
〈評〉大いなる空は大いなる可能性の空間である。「どの子」の未来にも、春は桜の冬は雪の美しい地球を渡してやりたいものである。
◆家系図の最後は私春田打つ
                 片岡 学(別府市)
〈評〉子はあっても家業は継がずで、営々と守ってきた農業も私の代で終わる。先祖に申し訳ないと耕しの鍬が重くなるのも然りである。
◆二人居が七人となり雑煮食ふ
                 修 子(大分市)
〈評〉いつもの二人居が孫子の帰郷で急に賑やかになるのが正月である。七福神に通じる「七」によき風習をことほぐめでたさがある。

 

【 吉原 白天 選 】

☆☆特選☆☆

生かされて生きて傘寿の初詣で
                佐野 玄冬(大分市)
〈評〉八十歳になるまで、長い間みんなの御陰で生きることが出来たという感謝の気持ちが詠み込まれている。また、初詣にあたって、これからもしっかり生きていこうという気概が感じられる。表現も良いし優しさ強さがある。

☆入選☆

◆朝風呂の湯気に透けゐる初明り
                押谷 隆(別府市)
〈評〉新年のめでたさと朝風呂の気持ちの良さが伝わってくる。情景がうかび、めでたさを感じさせ、なんとなく楽しさを与えてくれる句である。
◆寒垢離の締込み僧や瞳澄む
                美 咲(大分市)
〈評〉寒中に冷水を浴びて、仏に祈願している。しかも瞳が澄んでいる。その様子から気合いや覚悟、無病息災への願いが感じとれる句である。
◆振る度にいのちの響き種袋
                田中 英俊(宇佐市)
〈評〉種袋を振ってみると、生きているぞと返って来る。種は蒔いたらどんどん成長する命を宿している。命の大切さを学ぶような気がする句である。

 

【 山下 かず子 選 】

☆☆特選☆☆

母からの手紙のやうに初桜
                古川 みつよ(津久見市)
〈評〉日々の暮らしのなかでふと見上げた空。空へ伸ばした桜の枝に一輪の初花。その一輪は母の手紙のように優しく心にしみてきた。桜の向こうに故郷の景色が見えるようだ。巧みな比喩はしみじみと情趣を添えた。

☆入選☆

◆子の地雷踏まぬことです日向ぼこ
               森本 育子(別府市)
〈評〉幾つになっても子は子。善かれと思ってしたことが怒りを誘発した。ならばと日向ぼこを決め込み反逆を聞き流す。軽妙な場面が見える。
◆八十の手足励まし梅探る
               緒方 俊子(大分市)
〈評〉春の訪れを聞くころ梅を探しに少し遠出をした。まだまだ歩けるぞと自身を励ましながら見つけた一輪。至福の時間。
◆踏ん張って地球の重み大根引く
               大江 正人(中津市)
〈評〉畝から引く時の重さを地球の重さと叙した。ずしりと伝わる手応えは自然への感謝の思いだろう。土と暮らす豊かさもずしりとある。

【川柳】

川柳の部

☆奨励賞(最高齢者)☆

夏の一夜友と楽しい屋形船
抜けた歯を何の呪い屋根に投げ
           北山 爲友(臼杵市)(九九歳)
屋根の色様々に染めて初日の出
屋根伝い降りくる雨の音たのしき
           首藤 ハルヱ(大分市)(九八歳)
                     ※年齢は令和三年四月一日現在

【 小代 千代子 選  】

☆☆特選☆☆

始まりは古アパートの屋根の下
                金丸 土竜(佐伯市)
〈評〉そうでした。古くても狭くても輝いていた原点。振り返る余裕もなかった長い人生の誰にでもある原点にふと誘う。読者の心に置き忘れていた大切なものをやさしく呼び戻し、また生きようとパワーを頂いた作品でした。

☆入選☆

◆耳栓を時々使う一つ屋根
                村上 和子(別府市)
〈評〉くすっと笑った。ひとつ屋根には時に耳も目も塞ぎたい日が、そんな日も積み重ね情と言う人間の脆さ。そして強い屋根になるのですね。
◆戯れる屋根が舞台の恋雀
                小倉 英司(豊後大野市)
〈評〉陽の当たる屋根に雀がまさに恋に戯れるかの様な光景に見入ったことがある。勝手に思うのではあるがその何分間に人は癒やされる。
◆この街に骨を埋めます赤い屋根
                古寺 周一(宇佐市)
〈評〉新天地を求め今、移住の時代。赤い屋根が効いている。前向きな動じない決意に拍手。こんな句に出合うと日本の未来は明るい。

 

【 末田 洋一 選 】

☆☆特選☆☆

屋根よりも高く希望が弾む春
                中 徳治(中津市)
〈評〉春は生物が目覚め、活動を始める時期である。また、人は進学や就職で巣立っていく。若人の希望は、屋根よりも高く弾むようだと、声高らかに歌っている。春にふさわしい、すがすがしい一句である。

☆入選☆

◆発芽した子らを世に出す母の屋根
                藤田 勘芳(大分市)
〈評〉巣立つ子を「発芽した子ら」と、とらえたのは見事である。子供は母の屋根で守られていたが、一人立ちしなければならない。
◆古民家の屋根が支える幾世代
                秋吉 信隆(玖珠町)
〈評〉古い民家を見ると歴史を感じる。この家で家族がどのような生活をしていたのだろうか。屋根は幾世代も温かく見守っている。
◆復興の遅れ苛立つあおい屋根
                相田 いつみ(佐伯市)
〈評〉災害の後、屋根にブルーのシートがかけられたまま、復興がなかなか進まない。当事者でなくても復興の遅れに苛立っている。

 

【 後藤 喜代子 選 】

☆☆特選☆☆

母の星父と探した屋根の上
               佐野 玄冬(大分市)
〈評〉少しでも母の星に近づこうと父と屋根に登り探している。せつなくて悲しい選でした。私の知り合いにも小五で母を亡くした少年がいるので重なり涙が出ます。

☆入選☆

◆合掌の屋根に豪雪積む童話
               富永 美江子(大分市)
〈評〉世界遺産の岐阜県の白川郷。まっ白の世界に雪女が訪ねて来たりライトアップされた夜はまた別の童話がうまれそうです。
◆仮設の屋根に負けてなるかと鯉のぼり
               憲 道(中津市)
〈評〉地震や洪水で仮設住まいをしていてもそれに負けない強い意志を鯉のぼりに託している。がんばって欲しい。
◆大屋根の下で五輪の夢開く
              小石 敬子(杵築市)
〈評〉いよいよ東京オリンピックが開催されます。長い間練習してきたアスリート達。それを見るためにどんなにか楽しみに待っている人々。
※以上 作者敬称略